珍しく王都に雪が降った夜、いつも通り署名をもらいにきたはずだった。
「絶対入ってるな、これは」
見慣れた執務室には、遠近感が狂う大きさの箱が鎮座している。布飾りがごてごてと巻かれており、ご丁寧に旅の仲間の似顔絵まで描かれていた。
「ご不在のようなので、また来ます……と」
書き置きを音読して踵を返す。なんで年末の忙しい時期に茶番に付き合わないといけないんだ。選挙の最中も、絶対にふざけてはいけないタイミングで金が欲しいだの何だの言っていた。この間だって意味不明な部屋を組み立てていたし、勘弁してくれ。ああ、この一分でずいぶん痩せた気がする。焼いた鶏でも食べに行こう。香辛料を山ほどかけたやつがいい。手が辛くなる前に目頭を揉む。扉に手をかけたところで、背後から聞き慣れた声がした。
「焼いた鶏があるのに帰るの? 香辛料たっぷりだぞ!」
心を読まれて振り返ると、皿とナイフを持った王がこちらを見つめている。
「俺をとって食う気か!?」
「それはあとでね。とりあえず、ほら。乾杯!」
皿で示す箱の跡地には、食べきれないほどの晩餐が湯気を立てていた。
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